◉テレワークによる人材の2局化が なぜ組織変革の絶好のタイミングなのか?

 

新型コロナによる組織構造の破壊

 新型コロナの拡大から緊急事態宣言を経てテレワークが一躍脚光を浴び、大手電気ショップにはWebカメラやPCまでも在庫切れが長く続いていたが、社員が会社に集まっての仕事をするという当たり前のことがこのコロナによって破壊され、しばらくの間テレワークや在宅勤務といった仕事の仕方を、余儀なくされてきた。
そして、またこの第3波によりテレワークの必要性が加速化しており、組織での仕事のスタイルや価値観が大きく変わろうとしている、いやすでに変わったことを我々は理解しておかなくてはならない。
IT企業の中では完全にテレワーク化し、オフィスを廃止してバーチャルな仮想空間の中にオフィスを創り上げ、組織自体をその中に組み込んで仕事をしているところさえ出てきている。
 このような変化をもう少し掘り下げると、アフターコロナでは規則や運用ルールが一部戻るものもあるだろうが、新たな価値が生まれたところには、もう戻ることはないだろう。
私たちは今、経営の立ち位置を再確認し、新たな羅針盤を手に入れて経営を押し進めなければならない。

 そしてそれは、人材の中にも2局化という大きな変化を見せ始めている。

 この半年少々で、組織の中で仕事ができる人とそうでない人の違いが、このコロナによって明確に浮き彫りにされてきたのではないだろうか。
例えば、以前は組織の中で声が大きく存在感のあった管理職の人が、テレワークなどによりコロナの後は影が薄くなったというような人は周りにいないだろうか? ただ組織の上にあぐらをかいていたり、ハンコを押すだけで働いているフリをしてきた人は存在感がなくなってきているのかもしれない。
逆に今まであまり目立たなかったが、組織の関係から解放されたことにより、やけにしっかりと資料作成をしたり提案書などの評価が良かったりする人が出てきていないだろうか?
今までのリアル会議では、組織の上下関係やその風土により端の方にいた人が均一なWeb上の立ち位置に変わった途端、なかなかやるじゃない! と本来仕事の成果を出していた人たちが目立ってきたというより評価されてきていると言えよう。
 一概には言えないと思われるが、多くの組織でこのような話を聞くことが多くなってきた。      

 これは何の違いによるかというと、仕事の成果として「アウトプットをしている量や質による違い」と思われる。

なぜなら、今まで「人材の評価」という点において、上司に迎合したりうまく立ち回って仕事をしていたように見えていた人が、コロナによってただ目立たなくなっただけのことである。
 このように、新型コロナは仕事や組織の本質を顕にしてきていると言えよう。

テレワークによる人材の2局化とこれからの仕事の評価

 仕事とは、売上をあげたり成果物を作成したり新たな価値を創造していくようなアウトプットをすることであるが、組織にはいろんな人間がいてその役回りをおこなっている。しかしテレワークが進むことで純粋に「仕事ができる人」と「そうでない人」が明確になってきているのではないだろうか。
 また、このような仕事の変化に柔軟に対応できる人やそれに抵抗がない人と、そうでない人の差も大きく出始めている。
 テレワークやWeb上での会議など、以前は否定的だった人も意外と外出する時間や効率の面から、その利便性を享受しており、むしろこちらの方に慣れてきて戻るのが嫌だという人も多いのではないだろうか。
 元来、今までの成功体験や経験則の延長線上で仕事をしている人は、そのギャップを超えられずに停滞しているようにもうかがえる。
この大きな変化を、他人事として新型コロナに文句を言うのか、それとも自分ごととして捉えて変化を乗り越えようとしているのかの違いが大きい。柔軟性の問題でもある。

 テレワークによる大きな変化は、「働き方改革の推進、ワークライフバランスの向上、業務生産性の向上、オフィスコストの削減、BCP(事業継続性)対策」など様々なメリットを生むが、表面的にただ出社せずに自宅で仕事をするというレベルで捉えている会社では、元に戻ってよかったと何の価値変化も考えずに、これから置いてけぼりになるであろう。

なぜ今が組織変革に絶好のチャンスなのか?

 日本の社会は働き方改革という名のもとに、仕事の密度や仕組みを変えることなく残業は悪だという一点で時間短縮を行なってきた。本来の改革を行わずに性急に時短だけを行なった結果、全体の生産性が下がってきたところにこの新型コロナで追い討ちをかけられた企業も多いのではないだろうか。

 ここで、このコロナ禍によることをきっかけに、本来の仕事の取り組み方やその成果がどういう意味を持つかということも含めリセットし、数年後を目指す人事評価や創造性のあるアウトプットができる人材の育成やその組織風土、さらに数年後に迫るDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応など、大きく企業の組織のあり方を再構築すべき時期に来ているように思われる。

 きっと数年後はスキル・資格をもった経験者を採用する「ジョブ型雇用」が徐々に進み、組織風土も変化に対応する柔軟な考えが必要とされるようになってくると思われる。
 なぜなら、変化の時こそビジネスチャンスが生まれるのであるから、既存のビジネスモデルに固守しているところはそれなりに、そして今の経営環境の変化にどのように立ち向かっていくかを全員で考えて取り組んでいる企業こそが、次の時代を荷なっていくものと思われる。

 組織変革はトップダウンだけではなかなか進まないが、価値観が大きく変わるこのような時こそそれに取り組んだ企業は大きな意義を手に入れることができるのではないだろうか。
なぜなら、指示命令されてやるのではなく、必然的にそうしなければ取り残されていくという危機感が人々の気持ちに芽生えているからである。

 組織風土を変えるには長い時間とエネルギーが必要だが、コロナ禍はそのきっかけを世に問うているのかもしれない・・・。