現在は中小企業のみならず大手企業でさえコロナ禍により、消費者の価値観や行動に大きな変化が出て、経営判断が大変難しい状況です。
このような局面では、「トップダウン型の経営」だけではなぜ経営判断が難しいのでしょうか?
現代は、VUCAの時代と言われます。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こり、将来予測が困難な状況を意味する言葉です。
コロナ禍以外でも、台風や水害による予期せぬ自然災害、また米中経済戦争のいく末やトランプ大統領の再選があるのか、中国の覇権は?などなど直接的・間接的に不透明なことが複雑に絡み合っているのが今の時代です。
つい半年前も、サプライチェーンの問題で、中国からの部品供給が一つ止まったことで、多くの業界に何ヶ月も影響が出たことは記憶に新しいと思います。
例えばこのVUCAと呼ばれる予測困難な時代に、経営者が現場の肌感覚でないとわからないことを理解せずに経営判断をしたとします。
しかしそれにズレがあっても、社員はその指示に従って進みますが、考えをもたずに言われたまま進むと危険な結果を招くのは、ご想像の通りです。
また、創業期から成長期にかけては、経営者がトップダウン型で会社を引っ張っていきます。しかし安定期になって、権限委譲をおこない管理職に任せたと思っていても本来のボトムアップ型にならずに組織がうまく機能せず、多くの問題を抱えながら進んでいっている事例が、多くの企業で見られます。
そこに予測困難な「経営リスク」が発生すると、一気に経営や組織の問題が吹き出してきます。
経営とは面白いもので、業績の良い時は少々の綻びやバランスを欠いていても、なんとかうまい具合に進んでいくものです。
ただし、業績が悪くなった途端に、その綻びが一気に表面化したり、社内の人間関係が悪くなって部署間や本社と支店で責任がどっちだだとかのイザコザが起き始めたりと、問題があちこちで出始めます。
業績の影に問題の本質は隠れているのですが、なかなか気づかないし、気づいていてもその時には重要視していないのかもしれません。
このような局面で、一番重要なのは「人のチカラ」です。社員一人ひとりの意識や強い組織が構築できているかが、その壁を突破できるかどうかを握っています。
もはや、経営者や経営層だけの判断だけでは、限界を超えてきている のです。
このように経営に対して、今までの「トップダウン」や「ボトムアップ」のどちらが必要かと言う組織論ではなく、激変する時代だからこそ人事の問題を経営戦略の重要課題だと捉えてなくてはならない時代だということです。
要は、想定外のことが起こり得る経営環境だからこそ経営者の判断だけではなく、各現場で細かな判断を行い、経営者は全体像を掴みながらリスク分散をしていくという経営手法が経営や組織に必要になったということです。
「現場の判断」これはつまり、社員が自ら考え判断し、行動して責任を持つという「自律」という言葉に集約されます。
2025年のDX(デジタルトランスフォーメーション)の壁もそこまできています。
どれほどの会社が本気で取り組んでおられるでしょうか?
中小企業の経営者が到底理解できないこれらの経営の壁をどのように突破していくかは、既存の社員の能力をどのように発揮させるかにかかっていると言っても過言ではありません。
経営者は、社員それぞれの能力を最大限に引き上げ、「心理的安全性」をもった組織を構築し、今後の難局を乗り越えていかなければならない。
このような認識をもつ必要が経営者に必要な時代になりました。
もう、トップダウン型経営だけでは、経営判断に限界がある時代になったことを私たちは改めて認識しなければならなくなったと思います。